また意外と重要なのは、政治情勢です。戦争が起きそうだ、となったら、その国の通貨は売られやすくなります。また、世界的に金融市場が不安定になって、つまり株安だったり、銀行の破綻が続いたりして、先行きが見えにくくなった時には、安定性の高い通貨の人気が高まります。それはすなわち、ドルと円です。「有事の円買い」なんて言葉がありますが、円は何故か、金融市場では「安全通貨」と認識されていて、世の中が不安定になると、円が買われて円高になります。

画像=PIXABAY

以上は教科書的な説明で、実際のところ、目先の為替の動きを予測するのは極めて困難です。例えば、2011年3月11日の東日本大震災の時は、一時期1ドル=76円まで円高が進みました。未曾有の大地震と原発事故で国自体がどうなるかわからないのに、わざわざドルを売って円を買う人がたくさんいた。理由はよくわかりません。そもそも、経済成長率の低空飛行が続き、政府が借金をしまくっている日本の通貨が長期的に「安全通貨」の地位を維持していること自体、不思議な現象です。

という具合に、予測不能な為替ですが、企業にとって、為替はいつだって業績を左右する重要な要素です。不動産業のような超ドメスティックな産業であっても、建材などの価格に響いてきますし、高級賃貸を扱っていれば、法人契約の賃料の予算にも影響するかもしれません。鎖国でもしない限り、誰もが為替の影響からは逃れられないのです。

簡単に企業の影響をおさらいすると、モノを輸出する製造業などは、円高になると、製品の現地販売価格が値上がりする→モノが売れない→業績悪化、となります(最近は海外で製造する企業が増えているので、そんなに単純な話ではありませんが)。トランプ大統領が「日本と中国は通貨が安すぎる」と怒っているのはこの理屈です。ドルが高すぎるから、アメリカの企業のモノが売れない、どうにかしろという主張ですね。

一方、モノを輸入する企業にとって、円高は輸入価格の値下がり(仕入れ値が下がる)→利益が増える(販売価格の改定までには時間差があるので)、となります。日本は製造業が強い国だったので、「円安=企業にとってはマイナス」のイメージがありますが、実際はもうちょっと複雑なんです。

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