日経新聞を読まない君たちへ

「日経新聞くらい読めよ」社会人なら誰もが一度は言われたセリフです。そりゃ、客先で経済ニュースを語れるとかっこいいですもんね。でも、「だって、みんな読んでないしな…」と、何となく済ませている人も多いのではないでしょうか。それでは、心許ないので最低限に知っておいて欲しい経済ニュースを、経済誌の現役記者・編集者がこれ以上ないくらいにわかりやすく解説します。前回は、最近何かと騒がしいWE WORKの周辺について解説しましたが、今回はSoftBankが主導する投資ファンドについて紹介します。(リビンマガジンBiz編集部)

画像=PIXBaY

日経新聞を読まないみなさんはご存知ないと思いますが、ソフトバンクグループが10月23日、シェアオフィス「WeWork(ウィワーク)」を運営する米WeCompany(ウィカンパニー)に対して、総額95億ドル(約1兆円)の経営支援を行うことを発表しました。

WeCompanyは9月に予定していた新規株式公開(IPO)を延期したために、90億ドル(約9800億円)を調達し損ねて、資金繰りの悪化が懸念されていました。ソフトバンクがそんなWeCompanyを助けた格好で、実質的に経営権を握って建て直しを図ることになります。

WeWorkは、ソフトバンクグループ傘下の投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の投資先を代表する企業でした。投資額は110億ドル(約1.2兆円)に上るといわれています。その会社がIPOを前に大コケしたことで、「ビジョン・ファンド、大丈夫なの?」という声があらためてでてきています。

そこで今回は、このソフトバンク・ビジョン・ファンドに注目してみます。

ソフトバンクはもはや携帯電話の会社ではない

そもそも、ソフトバンクって何の会社だと思いますか? 携帯電話の会社? ヤフージャパンの親会社? プロ野球の球団を運営する会社? いろんな顔がありますが、これから最も大きな事業になりそうなのは、投資です。

ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、2019年8月9日に発表した、2020年3月期第1四半期決算の会見で、「もはや事業会社ではない」として、投資会社になることを宣言しました。そのソフトバンクの投資部門が、ビジョン・ファンドです。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドは、世界最大のテックファンド(テクノロジー関連企業に投資するファンド)です。運用規模は970億ドル(約10.5兆円)で、「10兆円ファンド」なんて呼ばれることもあります。このうち、33.1%(2019年6月末時点)をソフトバンクグループが出資しています。

このファンドの設立を発表したのは2016年10月。サウジアラビアの政府系ファンドも投資するということで当時、話題になりました。孫さんは、オイルマネーと手を結ぶことで、巨額の資金を確保することに成功したわけです。

このファンド、規模もすごいのですが、世界の新興テクノロジー企業のあらゆる分野に出資している点でもすごいファンドです。世界の注目企業が出てくると、ビジョンファンドが株主に入っていることが実に多いんです。

投資先企業82社の中には、WeCompanyのほか、英半導体開発大手のARM(アーム)、米配車サービス大手のUber(ウーバー)、中国のタクシー配車会社の滴滴出行(DiDi)、動画投稿サイト「Tiktok」を運営する中国のByteDance(バイトダンス)などすでに有名になっている企業のほか、インドのホテル運営のOYO(オヨ)、インドの決済会社paytm(ペイティーエム)など、日本ではマイナーだけれど、現地では注目のスタートアップ企業に軒並み出資しています。WeWorkやOYOについては日本での展開をソフトバンクが後押しするなど、事業を拡大させるための直接的な支援にも積極的です。

投資を進めるソフトバンクだけど、大丈夫なの?

 
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