3年生の演習科目「まちづくり演習」を担当している斎藤です。

不動産学部では主に建築工学系の科目を担当しています。

まちづくりに生かせる情報技術の研究を少しずつ進めています。


不動産学部授業「まちづくり演習」

筆者が昨年から担当している「まちづくり演習」では、大学が立地する浦安市の「元町」と呼ばれる地区を題材としています。

この科目自体はもう8年ほどの歴史があります。

演習のねらいは、おおきく三つあります。市街地を調査する能力、市街地の特徴や課題を読み取る能力、市街地の将来像を描く能力の育成です。

また、最終的な提案に至る過程でのチームワーク能力や情報伝達能力の育成も加えれば五つの目標をもった演習ということになります。

前学期開講の科目で、ちょうど先週、今年度の授業の最初の街歩きをしたところです(写真)。

3人一組で地区を調査する学生たち。猫実地区。

とまどいからのスタート
学生たちに聞くと、近くにもかかわらず、行ったこともないという学生が大半です。
少し前に、NHKの番組「ブラタモリ」でも取り上げられた地区ですが、聞くとこれも観たという学生がいませんでした。
自分たちが通う大学のある市内の街が取り上げられるのですから、学んでいる専門からすると興味をもってもよさそうですが、学生たちの関心は教員の期待とは少し違うところにあるようです。まさに、育成しがいがあるというところでしょうか。
最初はカメラをつかって、地区の特徴を捉えていくところから始めます。
写真をとることもプライバシーへの配慮など演習の説明の一環でいろいろ指導しなければなりません。
今年の学生たちの反応はこれから聞いていくことになりますが、昨年までの反応としては、困ったような、先生、ここで私たちに何をしろというのですか?このままがいい、というような反応があります。
学生達の着眼点が変わってくる
最初はそんな反応を示していた学生たちも、演習を通じて、人口や世帯がどんな動向にあるのか、どんな歴史をもった街なのか、防災上どんな課題があるのか、不動産としてどんな魅力があるのかなど、調べ、議論してもらうことで、現状維持だけではない提案が出てくるようになります。
もみじ広場に建つ旧濱野医院。洋館は地区のランドマーク。堀江地区。
演習では、現実の街を対象としているので、現実の市街地の変化とともに学生たちの着眼点も変わっていきます。
猫実、堀江地区に演習の課題地区として取り組みはじめたときにはまだ計画段階であった区画整理も、事業として着実に進行しており、数年前には地区の中心となるような道路、橋梁が完成しています。
そのためでしょうか、今年歩いた時に、住宅や店舗にずいぶん変化がでてきたように感じました。
新しい通りができたことの波及効果が表れてきているのかもしれません。
こういったことが今年演習に取り組む学生にどんな影響を与えるのか、楽しみなところです。
境川にかかる新中橋。猫実、堀江地区をつなぐ。
不動産学部における都市建築デザイン教育
不動産学部の授業科目の中では、まちづくり演習は比較的大きなスケールを扱う演習科目になります。
小さなスケールでは住宅レベル、インテリアレベルの課題があります。
オフィスやホテル機能を含む複合開発もありますし、住宅地区を計画する演習もあります。
不動産学部ではこのような都市空間や建築空間をデザインする能力の育成がカリキュラムの一つの柱になっています。
学生からすると、次のスケールはニュータウン?と思うかもしれません。
アジアの国々からの留学生であれば母国でかつての日本でおこなわれていたようなニュータウン開発、工業団地の計画が進行しているでしょう。
しかし教育上の現実からいうと、なかなかニュータウンのスケールを扱うことはできません。
まず課題を設定することの現実性から困難に見舞われます。
自分が大学教員になったころ(25年ほど前)からそれは変わっていません。
もう一つの困難さは、表現方法です。
規模が大きくなるほど、検討することは社会統計的な数値になっていきますが、それを、居住空間像をイメージできるような図にすることが難しいのです。
その点で、まちづくり演習で取り扱う範囲は10ヘクタールにも届かない範囲ですが、これを学生たちで分担することで、なんとか統計と空間像の連続性を保った将来像を描くことができます。
GISの活用
今年度の試みは、演習の早い段階でGIS(地理情報システム)を使うことです。
GISとはパソコン上で地図を表示し、人口や地価などを色分けしてわかりやすく示すことができるものです。
自治体、国も地域統計、地図データの公開に積極的です。
また、学生たちが普段使用する地図もインターネットで提供される地図、グーグルの地図やヤフーの地図になってきています。
普段使っているインターネット上の地図を土台にしてもう一段高度な利用法を学んでもらうことで、学生たちが演習で学んだ技術、手法を普段使いのテクニックとして活用していくことを期待しています。
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最後までご覧下さり、誠にありがとうございました。
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