不動産オーナー向け無料サービス「ビズアナオーナー」を運営するCBIT(東京都千代田区)が実施した不動産オーナー対象の意識調査を実施し、その結果を発表した。
事業承継問題が深刻化、約半数が実質的な継続困難

画像提供=CBIT
事業承継の実態についての質問では、承継者が決まっていないオーナーが40%、相続時の売却予定者が7%、一部売却希望者が1%となり、合計48%が今後の事業継続が困難になると予想される状況にある。さらに「承継者は決まっているが具体的な計画はない」との回答が35%に上り、実際には83%のオーナーが事業承継に何らかの課題を抱えていることが判明した。
高齢化が進む不動産オーナーの多くが、次世代への円滑な事業移転に不安を抱えている実情が数値で裏付けられた形だ。
値上げ実施は6割超も、対応策に偏重傾向

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物価高への対応状況についても興味深い結果が得られた。「すでに値上げを実施した」が41%、「今後1年以内に値上げを検討している」が21%となり、合計62%のオーナーが家賃値上げに踏み切っているか検討している状況である。

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対応手法を複数回答で尋ねたところ、家賃値上げと経費削減の工夫で142件の回答があった一方、「設備投資による差別化」はわずか23件に留まった。専門家は、値上げに依存した対応策の偏重が、長期的な競争力確保の観点から構造的な脆弱性を生む可能性があると指摘している。
デジタル化の遅れが鮮明、入居者ニーズとの乖離

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デジタル化への取り組み状況では、58%のオーナーが「特にデジタルサービスを導入していない」と回答し、業界のIT化の遅れが特徴的だ。導入済みのサービスとしては「オーナーアプリ(収支管理システム)」が28%、「SNSでの物件紹介・マーケティング」が10%に留まっている。

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これに対し、入居者ニーズの上位は「高速インターネット環境」が53%を占めており、需要と供給側の対応に大きなギャップが存在することが明らかになった。この乖離は、今後の競争力維持において重要な課題となる可能性がある。
完全版レポートでは、これらに加えて、経営コスト、経営課題、IT・設備ニーズ、相続・事業承継の4分野について詳細な分析結果を公表している。