毎週水曜日配信、「元不動産営業マン梶本の、結果を残す営業術」

業界歴21年、不動産会社専門コンサルタント 梶本幸治さんが、デキる営業の心得、成功している不動産会社の特徴を紹介します。

「物件の査定額が想定より低かった」、そんな理由で怒り出す売主がいます。この手の面倒くさい人とも、コツさえつかめれば良い関係が築けるかもしれません。(リビンマガジンBiz編集部)


(画像=写真AC)

最近の不動産市場は都心部を中心に値上がり基調ですが、日本全体で見ると横ばい、もしくは値下がりが続いている地域もたくさんあります。

そのような横ばい、もしくは値下がりエリアでは、不動産会社の提示した査定価格が売主様の希望価格よりも安いことが往々にしてよくあります。
郊外エリアを商圏にしている営業パーソンなら、売主様から「なんだ、この査定価格は!私の不動産がこんなに安いと言うのか!」と怒られた経験が1度はあるでしょう。
それではお尋ねします。売主様から「査定価格が安い」と怒られた時、あなたならどのような態度をとりますか?

このような場面では大きく分けて二通りの対応が考えられます。
まず1つ目は「謝罪型」の対応。査定価格が安くなってしまったことを詫びながら、平身低頭、売主様をなだめつつ媒介獲得を目指す手法です。
次に「説明型」。周辺事例や不動産市場の流れ等を詳細に説明しつつ、売主様にご理解いただく手法です。

しかし、この二通りの手法しかないのでしょうか?

私は、営業パーソンに指導する際、この二通りのどちらも得策ではないと伝えています。
私がおすすめめしている手法は「共感型」です。

売主様が「査定価格が安い」と怒っておられるなら、一緒になって怒れば良いのです
本当に安過ぎますよね。○○様の不動産がこんな査定価格になるなんてオカシイですよね
お怒りはごもっともです。大切な不動産がこんな価格だなんて…。私も怒っています
…というような、感じで。

ここまで読んでくださったあなたは、こんな風に思っておられませんか?
自分が出した査定価格に自分自身が怒り出すなんて、そんなムチャクチャなことはできないよ。売主様の怒りを倍増させてしまうだけだよ
このように思われる方は、査定価格というものを間違って認識されているかもしれません。

宅建業法34条の2第2項には「価額または評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない」と定められています。価格の根拠として周辺事例を用いるケースが一般的です。

査定価格を定義付けるとすれば、「不動産会社が考えた価格」ではなく「不動産会社がマーケット調査を行った結果として導き出された価格」といえます。つまり、査定価格が安くなってしまった原因はマーケットにあるわけで、不動産会社が売主に対して謝罪する筋合いはないのです。

では、「説明型」で対応すれば良さそうですが、「価格が安い」と怒っている売主様に対し、いくら詳細な説明を行ったところで聞く耳を持ってくれません。

ここはまず「共感型」の対応で売主様に怒りを収めていただき、売主様から詳細な説明を求められたら、満を持して市場説明を行いましょう。

我々営業パーソンは、「鑑定士」でも「評論家」でもなく「営業実務家」です。言っている理論が正しければそれで良いものではありません。過剰なへりくだりも(謝罪型)、鼻につく理屈っぽさも(説明型)も排除し、売主様の味方であることをアピールした後に、プロとしての提案を行ってください。


【本日の格言】
・査定額の根拠を理解し、たとえ怒られても退かぬ!媚びぬ!省みぬ!
・お客様が怒ったときはアピールポイント。共感することで関係性を築くべし!

 
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