人材難の時代に、令和の若者から「選ばれる会社」になるための3つの条件
不動産ビジネス“売れる仕組み”改革論
不動産業界は少子高齢化や人口減少、トップ営業マン依存、デジタル化の遅れなど、多くの課題に直面しています。
リクルートでの豊富な経験とモデスティでの伴走コンサルティング実績を持つモデスティ・長野卓将氏が、「売れる仕組み」をいかに構築し、不動産会社を持続的に成長させるかを解説。経営戦略、人材育成、営業力強化、マネジメントの仕組み化まで、明日から実践できるヒントをお届けします。

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忍び寄る「人手不足倒産」の影
いま、日本全体で人材難が深刻化しています。中でも不動産業界は、採用・定着の両面で苦戦を強いられています。
「新卒の応募がほとんど来ない」「異業種から採用しても、馴染めずにすぐ辞めてしまう」──多くの経営者が抱えるこの悩みは、放置すれば「人がいないために倒産する」という最悪のシナリオにもつながりかねません。 令和の時代に若者から「選ばれる会社」になるために、経営者はどこから変えていくべきなのでしょうか。
「九州=焼酎」の誤解に学ぶ、業界イメージの罠
なぜ、若者は不動産業界を敬遠するのでしょうか。多くの転職者が「ワークライフバランスが取りにくそう」「ノルマが精神的にきつそう」というイメージを持っています。これは業界への関心が薄いがゆえに、過去の断片的な情報だけで判断してしまっていることが原因です。
少し個人的な話をさせてください。私は佐賀出身なのですが、県外の方からよく「長野さんは九州男児だから焼酎が好きでしょう」と言われます。しかし、私は断然日本酒派です。実は佐賀は古くからの米どころで、九州で最も日本酒が飲まれている県なのです。 「九州=焼酎」という世間のイメージと、実態は異なります。
不動産業界もこれと同じ構造です。「興味の薄い人にとっての業界イメージは、一度固まると変わりにくい」。だからこそ、経営者自らがこの“思い込み”の壁を理解し、自社の正しい姿を外部へ発信していく努力が不可欠なのです。
令和世代にとって「OJT」は「放置」と同義である
では、何を伝えるべきか。令和の若者が求めているのは「お金」や「出世」以上に、「自分が成長できる環境かどうか」です。彼らは長期的なキャリアを見据え、どこでも通用するスキルを求めています。 人材紹介の現場で、求職者から「どんな研修がありますか?」と聞かれ、「OJTで学びます」と答えると、ほぼ100%「他の会社を紹介してください」と返されます。厳しいようですが、令和世代にとって「OJT=放置」なのです。
若手を採用するなら、体系的な育成の仕組みが必須です。新人研修、定期的な1on1、メンター制度など、「ここなら確実に成長できる」という道筋を用意してください。社内だけで難しければ、外部の専門機関を頼るのも有効な戦略です。
「等身大の発信」が共感を生む
そして、仕組みを整えたら必ず発信することです。自社サイトに載せるだけでは、すでに興味がある人にしか届きません。若者にリーチするならSNSが欠かせません。 特に効果的なのは、入社2〜3年目の若手社員による発信です。「なぜこの会社を選んだか」「どんな研修で成長できたか」など、若手の等身大の言葉は、同世代の心に最も響きます。そして、自らの経験を言語化し発信することは、彼ら自身のさらなる成長にもつながるはずです。何より、会社の顔としての発信を任せること自体が、彼らを「信じる」という最強のメッセージになるのです。
“働く意味”を与えられる会社へ
最後に、若者が長く働き続けてくれる会社には共通点があります。 それは、「明確なビジョン」「社会に求められるミッション」「社員を幸せにする真心」を、経営者が本気で掲げていることです。
どんなに仕組みを整えても、会社の未来像が見えなければ若者はついてきません。令和の時代に選ばれるのは、“働く意味”を与えられる会社です。若者はその想いを敏感に感じ取り、自分の成長を預ける場所を選んでいます。
人材難の今こそ、「育てる」「伝える」「信じる」──この3つを軸に、次世代から選ばれる企業づくりを始めましょう。
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著者プロフィール リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)に入社後、マンション・戸建分譲会社・仲介会社・注文会社・リフォーム会社等を担当し、各地でマネージャーを歴任。「虎の穴研修」(新人育成研修)やトップ営業研修を開発。鹿児島支社長を経て独立し、2012年に株式会社モデスティを設立。 |

