トップ営業マンが退職しても困らない。NO.2の育て方
不動産ビジネス“売れる仕組み”改革論
不動産業界は少子高齢化や人口減少、トップ営業マン依存、デジタル化の遅れなど、多くの課題に直面しています。
リクルートでの豊富な経験とモデスティでの伴走コンサルティング実績を持つモデスティ・長野卓将氏が、「売れる仕組み」をいかに構築し、不動産会社を持続的に成長させるかを解説。経営戦略、人材育成、営業力強化、マネジメントの仕組み化まで、明日から実践できるヒントをお届けします。

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トップ営業マンに頼らない組織をつくる
前回のコラムでは、「なぜ不動産会社はトップ営業マンに依存するのか」をテーマにお話ししました。結論から言えば、トップ営業マンが退職しても困らない組織をつくるためには、「NO.2を育成する」ことが欠かせません。今回はその具体的な「NO.2の育て方」についてお話ししたいと思います。
まずは“誰が2か”を見極める
最初に取り組むべきは、「そもそも誰がNO.2なのか」を見極めることです。NO.1の営業マン、つまりトップ営業マンは社内の誰が見ても明確ですが、「うちのNO.2は誰だろう?」と問うと、意外に意見が分かれます。
「Aさんじゃないですか」「いや、B君だと思います」──そんな声が出る会社も多いでしょう。
かつて政治家の蓮舫さんが「2番じゃダメなんでしょうか」と言って話題になりましたが、組織づくりにおいては“2番を明確にすること”が非常に重要です。社内には2〜3人ほど「NO.2候補」がいるかもしれませんが、その中からたった一人を選び、集中的に育成することが最も効果的です。
候補が複数いる場合は“見極めの面談”を
もしNO.2候補が複数いる場合、まずは候補者と個別に面談を行いましょう。「NO.2を決める面談」とストレートに伝えると角が立ちやすいため、通常の1on1や定期面談の中で自然に話を引き出すのがコツです。
ポイントは、「この人が将来的にNO.1を目指しているか」「会社の幹部になりたいと思っているか」「素直に学ぶ姿勢があるか」という3点。能力よりも大切なのは“素直さ”です。たとえ現時点でスキルが劣っていても、素直で吸収力のある人材こそ、NO.2として伸びる可能性を秘めています。
トップ営業マンとの差を明確にする
次に、トップ営業マンとの「差」を徹底的に可視化します。商談回数、ヒアリング力、クロージング力、不動産知識、街や物件への理解度──あらゆる角度から比較・分析を行いましょう。
特にトップ営業マンと同行(同席)している社長や管理職であれば、具体的な差分を見つけることができます。また、NO.2本人がトップ営業マンと関係性を築いている場合は、「どんな点を意識して商談していますか?」と直接聞くのも有効です。
課題を“なんとなく”ではなく、明確なリストとして把握することが、次の成長ステップの出発点になります。
育成計画を立て、トップ営業マンを超える
課題が明確になったら、NO.2の営業マンと一緒に長期的な育成計画を立てましょう。目安は半年から1年。ゴールは、トップ営業マンの業績に追いつき、最終的には追い抜くことです。
まずは期間を区切って行動計画を立てます。たとえば「トップ営業マンが1日3件の商談をしているなら、自分は1日2件を3か月続ける」といった具合に、具体的な数値を設定します。営業スキルに課題がある場合は、毎朝30分のロールプレイや、上司・管理職の商談同行を通じた実践トレーニングも有効です。
3カ月ごとに振り返り面談を行い、結果を確認・修正して次の行動計画につなげましょう。
このサイクルを1年間続けることで、NO.2の営業マンは確実に力をつけ、トップ営業マンに肩を並べる存在へと成長していきます。
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著者プロフィール リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)に入社後、マンション・戸建分譲会社・仲介会社・注文会社・リフォーム会社等を担当し、各地でマネージャーを歴任。「虎の穴研修」(新人育成研修)やトップ営業研修を開発。鹿児島支社長を経て独立し、2012年に株式会社モデスティを設立。 |

