賃貸住宅建築専業メーカー比較 2021

賃貸住宅建築会社「大東建託」「レオパレス21」「東建コーポレーション」の3社を、2020年3~4月期の売上、営業利益、純利益、社員数、物件管理戸数、時価総額の6つの観点から比較し、ご紹介します。併せて前年期との増減率、時価総額についてはコロナ前後の株価変動についても考察します。(リビンマガジンBiz編集部)

集計方法

・2020年3月期(大東建託、レオパレス21)および2020年4月期(東建コーポレーション)の有価証券報告書より集計

・連結決算の数値を採用

・2021年4月26日時点の時価総額を集計

・物件管理戸数の数値は、週刊全国賃貸住宅新聞の「2020年管理戸数ランキング1083社」より集計

画像=Pixta

売上ランキング:1位大東建託はほぼ横ばいも 3社ともに減少

1位は大東建託で、売上高は1兆5,862億9,300万円となりました。前年比では約100%の横ばいですが、厳密には48億8,500万円の減少となっています。大東建託は土地活用に悩む土地所有者のために、独自の賃貸経営受託システムを構築しており、公式サイトでは賃貸経営に必要な知識を網羅したカタログセットをプレゼントしています。

大東建託は2020年3月決算なので、2020年2月ごろから急拡大したコロナ禍の売上への影響は限定的です。しかし、元々借家市場が縮小傾向にあり、入居者の住まいを見る目が厳しくなっていることなどから、売上が減少に転じたと考えられます。来期は、コロナの影響がより一層現れてくると思われます。

2位のレオパレス21は前年比86%、3位の東建コーポレーションは98%と、それぞれ売上が減少しています。こうした傾向は、営業利益・純利益のランキングを見ると、より一層顕著に表れています。 

利益ランキング:1位大東建託は増益、他2社は苦戦 社員数ランキングにも影響

1位の大東建託は、営業利益と純利益を前年比でわずかながらも増加させています。その一方で、2位の東建コーポレーションは前年比82%~79%前後と、大幅な利益減となっています。3位レオパレス21の状態は並外れて深刻で、営業損失は-494%、純損失は-117%となりました。

レオパレス21は賃貸アパートやマンションを手掛けており、家具・家電付きの便利な部屋を選べるほか、コロナ以降は医療従事者向けのお得なプラン「医療従事者応援プラン」を始めています。2018年4月ごろから施工不良問題が表面化し、まだ信頼を回復できない状態でコロナ禍になってしまいました。今後はさらに厳しい経営を迫られそうです。

利益の増減は、社員数の増減にも影響を与えています。

社員数ランキングでは、1位大東建託は社員数前年比101%と微増、2位レオパレス21は約7%社員を削減しました。3位東建コーポレーションはほぼ横ばいの100%ですが、22人の微減となっています。利益を維持した大東建託は社員を増やした一方、他の2社は利益減少に応じて社員数を減らす結果となりました。

物件管理戸数ランキング・時価総額ランキングは東建コーポレーションの健闘目立つ

2020年の物件管理戸数ランキング1位は大東建託で113万218戸となりました。前年より4万3,291戸増加しています。2位はレオパレス21で、去年より1,000戸増加し57万5,798戸となっています。3位の東建コーポレーションは24万6,822戸と、去年より1万3,202戸増加しており、増加率では前年比106%と、3社中最も高い伸び率を記録しました。

東建コーポレーションは高耐震技術や優れた遮音機能を持つ「シェルル」シリーズの賃貸住宅のほか、高耐震木造賃貸住宅の「スイート・テラス」シリーズも手掛けています。巣ごもり需要が高まる今、賃貸住宅にも快適さが求められており、耐震性や遮音機能に優れた東建コーポレーションの住宅は今後需要が見込まれます。

投資家も、東建コーポレーションの住宅の質の高さに目を向けてか、同社の時価総額の増加率は3社トップとなりました。

2021年4月26日の時点で、1位の大東建託は、コロナ第一波の緊急事態宣言下で株価が暴落していた約1年前の2020年5月から、103%とわずかに回復するにとどまっています。コロナ前の2019年4月の水準にまでは戻っていません。

他方、2位の東建コーポレーションは、1年前はもちろん、コロナ以前の2年前と比べても時価総額が大きく増えています。同社の有価証券報告書ではコロナ禍について、厳しい見通しを示していますが、有利子負債の少なさなどが投資家に好印象を持たれているようです。

レオパレス21は前年比79%と時価総額を減らし、その経営状況には投資家からも厳しい目を向けられています。

来期は3社とも、コロナの影響がよりはっきり数字に表れてくることでしょう。特にレオパレス21にとっては、生き残りをかけた経営判断を迫られそうです。

 
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